理事長所信
一般社団法人 白浜・田辺青年会議所
2026年度理事長予定者 浅山 誠一
~はじめに~
日本の地方は今、人類が経験したことのない少子高齢化・人口減少の影響により、様々な問題が顕在化し始めています。我々の地域もまた他の地方と同じように経済規模の縮小、人材不足、地域コミュニティの希薄化といった課題に直面しています。人々の価値観もより複雑多様化する中、我々がJCの活動、運動をする意義が今、問われています。
「会員の修練・奉仕・友情の信条のもと、会員の連携と資質の向上に努めることで地域社会の発展を図る」と定款にあるよう、我々は地域のリーダーを育成し、地域社会をより良くする団体でなければなりません。しかし、コロナ禍以降、白浜・田辺青年会議所では社会情勢やメンバー数の減少により、事業数を減らざるを得ない状況が続いてきました。2026年度は今一度、「JCは何をするところか」という原点に立ち、今まで以上に事業(=社会課題の解決、メンバーの発展と成長の機会の提供)と向き合う1年にしたいと思います。また社会が大きく変わる中で組織を発展、継続していくためには、これまで先輩諸氏が築き上げてくださった厳格な組織運営やメンバー同士の友情を大切にする精神を受け継ぎながら、我々も時代とともに変革していかなくてはなりません。地域に必要とされる組織となっているのか、メンバーが「JCに入会して良かった!」と心から思えるような組織となっているのかを私自身も常に自問自答しながら理事長の職を全うする所存です。
では、現状の白浜・田辺青年会議所に何がより必要なのか。私なりに大事にしたい3つのワードをスローガンに掲げました。
一点目は「圧倒的当事者意識」です。皆さんは白浜・田辺青年会議所の運営や仲間の取り組みを自分事として捉えることができているでしょうか。私はこれまで以上にメンバー一人ひとりに組織の一員としての当事者意識を持っていただきたい、それも圧倒的にと思っています。組織運営や仲間の取り組みは回りまわって自身の評価へとも繋がります。我々は一蓮托生の存在なのです。どのようなことがあっても任せられた役割や物事に対して自らの責任で主体的に取り組む姿勢、組織運営や仲間の取り組みを自分事として捉える姿勢を持つことができれば組織はより強くなるでしょう。
二点目は「社会起点」です。我々は社会の課題を解決することで持続可能な地域を創ることを目指しています。社会が抱える課題や問題を起点とし、それらを解決に導くことができればより社会から認められる団体へと昇華できるでしょう。社会のために、できるだけ広く、深く、長い視点で「何のためにやるか」を突き詰め、事業を展開していきましょう。
三点目は「過去を超える」です。2025年、白浜・田辺青年会議所は設立60周年の節目を迎えました。設立以来、先輩諸氏は若い力を結集し、紀南文化会館の建設運動や梅酒・梅ジュースのギネス世界記録達成など、地域社会に大きな影響を与える活動、運動を展開してきました。我々も先輩諸氏と同じように社会に影響を与える活動、運動を行いたいと強く思っています。過去を超えるという気概をもって一歩を踏み出し、結果にこだわって共に最後までやり遂げましょう。そして、過去の自分をも超えて成長を果たしましょう。
以上の三点を2026年度の全体の行動指針として運営してまいります。
~今こそ全員拡大~
青年会議所は40歳で卒業する「青年の学び舎」であり、2026年度は8名ものメンバーが卒業する予定となっています。我々の組織は基本的に会費を原資として各種活動、運動を展開しているため、組織の規模は会の運営そのものに直結します。また会員数が減ることで特定のメンバーに負担が圧し掛かるようなことはできる限り避けなければなりません。そのため一定の規模を維持していかなくてはならないのです。本年度はメンバー全員が会員拡大の意識をより強く持てるよう各委員会に会員拡大の役割を分散し、全体で進捗管理を進めてまいります。あなたの力が必要です。次の時代を担う人材の加入に向けて、全員で会員拡大に取り組んでまいりましょう。
~魅力ある組織運営と内部統制~
「もっとこうすればいいのに」JCでの組織運営において、誰しも一つは感じたことがあるのではないでしょうか。しかし、前例踏襲によりなかなか前に進まない、そのようなジレンマを私も感じてきました。これまで積み重ねてきた歴史や伝統、法令順守という“厳格さ”を受け継ぎつつも、「もっとこうすればいいのに」「こうしたほうがもっと良くなる」といった一人ひとりの声に向き合い、改善を重ねていきましょう。そうすることで組織はより魅力的になり、より良くなると信じています。また企業と同じく、組織が効率よく事業を行ったり不正を防いだりするためにも内部統制の考え方を取り入れることも大切になるでしょう。これまでの縁の下の力持ちとして支えてくれていた総務委員会像ではなく、内部変革の旗手として事務フローの見直しやDXの推進、ステークホルダー(メンバー、関係団体、地域社会等)との関係性をさらに深める渉外活動を行い、攻めの総務としてより効率的でより魅力的な組織を築き上げましょう。
~学び続ける組織や地域に~
生成AIの登場はインターネット以来の技術革新といわれ、社会のあらゆる場面で活用が進んでいます。これまでの積み込み型の学習は見直され、代替可能な仕事は置き換わっていくでしょう。その一方で溢れる情報の中で何が正解かを見極める力や人の力がさらに問われています。変化の速い時代だからこそ、人としての教養や寛容性を高め、学び続ける必要があるのです。それは地域の将来を担う我々青年経済人はもちろんのこと、地域住民一人ひとりにも浸透しなければなりません。人生100年時代、生成AIの時代だからこそ学び続けることの重要性を広く伝えてまいりましょう。
またメンバーが一人前のJAYCEEとなれるよう我々が大切にしてきたことを正しく伝え、学び続けられる仕組み作りも必要です。JCI Mission(青年会議所の使命)にもあるように、青年会議所の使命は青年に「発展と成長の機会を提供する」ことであり、その結果、青年が「まちをより良くする運動をつくることができるようになる」ことが青年会議所で成すことだとされています。白浜・田辺青年会議所が「地域で活躍する人材を排出する組織」と成り続けられるよう、その入り口となる新入会員への伴走を徹底することで組織を昇華させてまいりましょう。
~未来を担う子どもたちに今できることを~
2024年に日本人の年間の出生数は統計開始以来、初めて70万人を下回り、少子化は国の想定よりも15年ほど早く進行しています。その一方で児童、生徒の自殺者数は過去ワーストとなり、子どもの貧困や体験格差も社会問題化しています。そのような子どもたちを取り巻く状況を十分に理解したうえで、学校や家庭とは違う第三の場所で子どもたちに様々な機会を提供することが今、我々がやらなければならない青少年事業だと考えています。子どもたちの一生の思い出になるような、子どもたちの笑顔に溢れる未来へつながる機会を提供してまいりましょう。
またJCティーチャーの取り組みもさらに進化させましょう。これまで学校側のニーズに応じて様々な形で実施してきたことでJCティーチャーは内外から高い評価を得ることができています。過去の活動をまとめ、幅広い価値を提供できるという自信を持って能動的に展開していきましょう。
~地方創生の一翼を担う~
「あなたのまちの課題は何か」と10人に聞いたら10人が別々のことを答えるほど、地方は今、課題が山積しています。数多の社会課題の中、我々は単年度制である以上、この1年間でどの課題に取り組んでいくのかを地域の声とエビデンスをもとに早期に設定し、主体的に行動に起こしていくことが大切です。社会課題に果敢に取り組むことが、地方創生の一翼を担うこととなるのです。持続可能な地域となるために、我々だけでなく、企業や住民、行政、各種団体とも連携を図り、継続して地域や住民に訴えかけ行動変容を促す仕組みづくりや新たな文化や価値を創造するようなまちづくりへの取り組みを行ってまいりましょう。
青年会議所では現在、全国的に地域防災力の向上に資する取り組みを展開しています。我々もLOM管内が南海トラフ巨大地震による甚大な被害が想定されているため、これまで様々な取り組みを進めてまいりました。有事に向けた行政や他エリアのLOM、日本青年会議所との連携だけでなく、巨大地震や豪雨災害などの激甚化する自然災害に備え、災害に強いまちづくりも主導できる人材、組織となるよう新たな展開を模索してまいりましょう。
~結びに~
「人生は選択の連続。選択肢の多い人生を歩めるよう努力しよう。選んだのなら、その選択が正解といえるようあとは頑張るだけ。」これは、私がJCティーチャーでいつも使っているフレーズです。皆さんも最終的には自分が選択して、JCに入会したはずです。家族や仕事、プライベートの時間を削り、周りの人々に支えられ、苦悩しながら日々を過ごしていることも理解します。時に人とぶつかり合うことも「何でこんなことをしているのだろう」と思うこともあるでしょう。でも40歳までの限られた時間。人は人で磨かれるため青年会議所は「青年の学び舎」なのであり、苦しい時にSOSを出せば支えてくれる仲間が周りにいます。本気で向き合うことで新たな世界を見ることができるはずです。勇気をもって一歩踏み出しましょう。
これから数十年、少子高齢化・人口減少は加速度的に進みます。我々がこの地域で住み続けるのならば、仕事や家庭はもちろんのこと地域や社会からも頼りにされる機会が必然的に増えることになるでしょう。その時、期待に応えられるのか。期待を超えられるのか。はたまた断り続ける人生を歩むのか。私は仕事や家庭だけでなく、青年経済人は地域社会のリーダーにも成ってほしいと願っています。向き不向きよりも前向きに、明るく楽しくJCという器を使い、個人ではできない活動、運動を一緒に展開し、自分自身を成長させながら「明るい豊かな社会」を実現させていきましょう。
2026年度 基本計画
基本理念
圧倒的当事者意識
社会起点
過去を超える
基本方針
・全員拡大、全員参画
・改善を積み重ねる攻めの組織運営
・学び続ける組織、地域へ
・青少年への機会と幅広い価値観の提供
・地方創生と地域防災力向上への挑戦
